TALK
ソードアート・オンライン アリシゼーション
小野学×伊藤智彦 対談
「これまでのアニメ『ソードアート・オンライン』から受け継ぎつつ、原作の面白さを大切に描きたい」
「実績をお持ちの小野さんならば安心だと思いました」
『ソードアート・オンライン アリシゼーション』のアニメ化がいよいよ具体的に発表されました。
まず、伊藤さんがこの一報を聞いて思ったことをお聞かせください。
- 伊藤
- そもそもアニメ化にあたり俺は原作をWeb版で全部読んでいたので、『ソードアート・オンライン』の第1期のアニメをつくる前から《アリシゼーション》編のことは知っていました。ただ、これを映像化するのは大変だろうなと感じていました。もちろん「《アリシゼーション》編までアニメ化できると良いですね」とは思っていましたけど…。だから、劇場版のラストシーンは誰がやってくれるのかわからないけれど「このバトンを受け取ってくれ」という想いでラストシーンをつくっていたんです。
『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール』のラストシーンにはそういう意味があったんですね。
では、小野監督が《アリシゼーション》編の監督を引き受けた経緯をお聞かせください。
- 伊藤
- 話を聞いたのは、いつでしたか?
- 小野
- 劇場版の試写が行われている時期ですね。それ以前からアニプレックスのスタッフから「『ソードアート・オンライン』シリーズは原作の最後までアニメ化する予定です」とは聞いていました。
小野監督が《アリシゼーション》編のアニメ化を引き受けた理由はなんでしょうか?
- 小野
- TVシリーズも第1期、第2期とあって、劇場版もある人気のシリーズですし、引き受けたときのプレッシャーの大きさも当然考慮していました。ただ、このスケールの作品をやれるのは、今だけだろうなと感じたんです。TVシリーズの現場は大変ですが、気力、体力ともに今ならベストだろうと思えたのは、大きい理由になりましたね。
お二人は原作の《アリシゼーション》編にどんな印象をお持ちですか?
- 伊藤
- まずボリュームが大きい。ストーリーも長いし、戦争も描かなくちゃいけない。「(アニメ化するには)どうしたらいいんだ?」という印象がありました。おそらくアニメ化するには一期からのべ10年はかかるだろうと、原作を読んだときには感じていましたね。
- 小野
- 僕も伊藤さんと感想は同じで、スケールが大きくて大変な内容だなと感じていました。ただ、伊藤さんが原作をお読みになったころには「10年かかるだろう」と感じた表現が、昨今さまざまな技術が向上したことでTVアニメでも表現できるところまで来ている感覚がありまして。「チャレンジはできるだろう」と思っているところもあります。
- 伊藤
- 新キャラクターも登場するし、物語としてはちょうど切れ目になる展開もあるので、ここで監督を交代するのも良いんじゃないかと(笑)。アリスとユージオの見せ方は小野監督の色に染めていただいて良いと思っています。
- 小野
- ありがとうございます。伊藤監督がおっしゃるとおり、《アリシゼーション》編で作品のカラーがガラッと変わるところは僕が今回引き受けた理由のひとつでもあります。とはいえ、キャラクターデザインは前作から引き続き、足立(慎吾)さんなので作品の背骨は変わりません。新しい設定やキャラクターの見せ方に自分なりの思いを込めていきたいと思います。
これまでのアニメ『ソードアート・オンライン』については、小野監督はどんな印象を受けていらっしゃいましたか?
- 小野
- 僕はリアルタイムで第1話を拝見していて、すごく興味を引く、理想的な第1話だなと思っていました。キリトやアスナの魅力やアクションのカッコよさや、ストーリーのアイデアが面白いなと。
全体としては、キャラクター同士が素直に感情をぶつけあうところに面白さを感じていました。ある種の「生っぽさ」ですよね。《アリシゼーション》編にもそういう生っぽさはあるので、そこは自分なりにチャレンジしてみたいところだと思っています。 - 伊藤
- 実績をお持ちの小野さんに監督を引き受けていただけて、安心しました。これまでいろいろなところで「《アリシゼーション》編を期待しています」と言われていたので、やっと「監督、俺じゃないんですよ」と言えるようになったなと胸のつかえが取れたような気持ちです。
- 小野
- 第1期、第2期、劇場版の流れを受け継ぎつつ、あくまで『ソードアート・オンライン』という作品の面白さを追求していきたいと思っています。
小野監督は《アリシゼーション》編を具体的にどんな作品にしたいと考えていますか?
- 小野
- 原作の《アリシゼーション》編の序盤はキリトとユージオの友情を中心に描いていくので、アニメ版でも男の友情をしっかりと描いて、見ている人たちの心を熱く動かしたいなと思っています。キリトについては11歳の姿を描くので、11歳らしさをどう表現していくかがひとつのポイントになりますね。作品を見た人たちが、「一体どんな展開になるの?」と感じてもらえたら良いなと思っています。
最後に伊藤さんから小野監督に贈る言葉があればぜひ、お聞かせください。
- 伊藤
- 『ソードアート・オンライン』の現場は、意識を失って救急車に運ばれる監督がいたり(笑)、骨を折ったりするキャラクターデザイナーがいるような、怪我人、病人が多い現場なので、くれぐれも身体にお気をつけください!
- 小野
- ありがとうございます、本格作業の前に人間ドックに行っておきます。(笑)
- 伊藤
- 小野監督による《アリシゼーション》編を楽しみにお待ちください!
-
小野学
アニメーション監督、演出家。
主な監督作に『咲-Saki-』シリーズ(2009年~2015年)、『Aチャンネル』(2011年)、『境界線上のホライゾン』シリーズ(2011年~2012年)、『魔法科高校の劣等生』(2014年)、『学戦都市アスタリスク』(2015年)など。 -
伊藤智彦
アニメーション監督、演出家。
主な監督作に『世紀末オカルト学院』(2010年)、『ソードアート・オンライン』シリーズ(2012年~2017年)、『銀の匙 Silver Spoon(一期)』(2013年)、『僕だけがいない街』(2016年)など。