――『ソードアート・オンライン』のキャラクターデザインを受けたのはいつ頃でしょうか?
2011年の10月くらいですね。アニプレックスさんからお話をいただいたのですが、僕は原作を読んでいなかったので、とりあえず原作を読ませて下さいと言って、深夜の2時くらいにA-1 Pictures近くのファミレスに入って読み始めたんですよ。すると面白くて、あっという間に読んでしまって。僕も元々オンラインゲームにはまっていた時期があったので、世界観にすっと入れたんですね。それですぐにプロデューサーの加藤さんに「やりたいです」と連絡して、やらせてもらうことになりました。
――足立さんはオンラインゲームに詳しいのですか?
結構やってましたよ。『ファイナルファンタジーXI』とか『リネージュ』とか。あとアメリカの古いオンラインゲームの『Oberon』とか。「shadowbane」のカオスな世界感も好きでした。「リネージュを引退した後、FFXIにかなりのめりこんでしまって、5年くらい遊んで総プレイ時間320日とかでしたね(笑)。いまでもたまにログインしますよ。 ずっと獣使いのソロプレイがメインだったので、キリトの気持ちも、シリカの気持ちもわかります あのプレイ時間もSAOをやる為の長いロケハンだったんですよ、きっと(笑」
――実際にデザインするにあたって、伊藤監督とはどのような話をされましたか?
特に何か具体的なオーダーがあったわけではないんですが、女の子を可愛く描いてほしいというお話はありました。原作の表紙を見ても、キリトと女の子という組み合わせが多かったので、僕に求められているのはそこかなと。
――キャラクター原案のabecさんとはどのようなお話をされましたか?
元々abecさんの絵は好きだったので、お会いできたのは光栄でした。 提出したラフスケッチをabecさんや川原先生、アスキー・メディアワークスの三木さんに見ていただいて、ご意見を頂きながら方向性を探るところから始めました。abecさんのこだわりの部分と、アニメ製作側が、僕に期待している仕事の部分とをお伺いし、現場の意見も反映しながら進めてきました。小説で挿絵の無いキャラクターのデザインはabecさんから戴いたものを元に設定作業をしてます。また、衣装が多いので、私がデザインしたものを、チェックしていただいて採用している物もあります。
――キャラクターデザインをされる際の方針は?
基本的にはabecさんが描かれたデザインを維持しながら、アニメのワークフローに落ちるように調整する感じです。各キャラごとの年齢や身長、等身バランスをアスナとキリトを中心に揃えて、年齢差を考慮して調整したりでしょうか。
――基本的にはアスナ、キリトを基本にして調整していく感じでしょうか。
この作品はアスナとキリトが出ずっぱりで、それ以外はメインキャラクターでも常に出ているわけではないんです。むしろ一度登場したら、それ以降でないキャラクターも多いので、自然とキリト、アスナを中心に考えるようになりますね。
――abecさんの原案からアニメ用のデザインを起こされるとき、難しい部分や注意された部分はありますか?
abecさんの絵はかなり線が多いんですけど、なるべく線を減らさず、服や鎧の模様となんかも減らさないようにしています。線が多くてアニメーションで動かすのが難しい絵もかなりあるんですけど、伊藤監督もなるべく原案通り、あるものは描こうということだったので、ほとんど線は減らしてないですね。
――作画的には大変ですね。
大変ですね(笑)。でもそれを減らしてしまうと雰囲気が違ってしまうんですね。SAOの世界を表現するために、ここは頑張るしかないと思っています。
――原作を読まれてのキリトの印象は?
キリトは強くて頭も切れるトッププレイヤーなので、MMORPGで底辺プレイヤーだった自分が経験できなかった体験を見てる感じですね。
そういったキリトのヒロイックな所も好きなのですが、彼がたまに見せる悲哀のある葛藤も魅力に感じているので、その辺りをうまく表現できるといいですね。
――アスナの方はいかがですか?
アスナは難しいんですよね。影があって底抜けに可愛く描けばいいわけではない。大人びたキャラクターで、、可愛いより、綺麗、美しい、という印象のキャラクターだと思います。
これといった弱点のない女性なので、嫁にするならアスナなんでしょうね(笑。料理とかもしてくれるし、いいじゃないですか。
――足立さんは総作画監督も担当されていますが、どういう部分をチェックされていますか?
総作画監督は現実的には作品の最低ラインを守る仕事です。足りないところを持ち上げる役なので基本的にはしんどいポジションなんですけど、『ソードアート・オンライン』は上手い人が沢山入っていて、川上哲也さんという心強いパートナーもいますし、しかもアクションパートの作画監督もいて、主に戦闘シーンとかの芝居はアクションを見てくれているので随分助かっています。
――『ソードアート・オンライン』には、アクション作画監督という役職があるんですか?
アクション作画監督は柳隆太さんと鹿間貴裕さんという方なんですけど、間近で2人の絵を見ると、僕もこういうアニメーターになりたかったなって思うくらいすごく上手いです。アクションパートは絵コンテからやってもらっているんですが、とても迫力があるので、僕も観るのが楽しみです。
――アクションパートは絵コンテから参加されるんですね。
アクションは画力だけじゃなく、アイディアが必要なので。最近ではアクションものそのものが少なくなっていて、描く機会が少ないので、上手い人は特に貴重です。
――アクション作画監督という役職があるということは、アクションに関してはかなり力を入れているということですね。
せっかく映像化するんだから、キリトがどう戦うのか、アスナが閃光と呼ばれるのは何故なのかを視覚的に見たいじゃないですか。何度も大きな戦いがありますが、まずは第2話で最初の戦闘の見せ場があるので、気に入っていただけると嬉しいです。
――キービジュアルを拝見すると、アクションのみならず、世界観や背景にも力を入れています。
2022年という世界観の未来に存在するであろうMMORPGが、一体どんな魅力的なゲームなのか。この作品を見た人がプレイしたいと思うような世界を作りたいなとも思うので、メニュー画面やユーザーインターフェース、ソードスキルにはこだわって、面白そうなゲームのビジュアルを提示したいと思っています。
――最後にファンへのメッセージをお願いできますでしょうか。
役者さん、音楽、背景美術、演出、作画、撮影とそれぞれが力を尽くしてSAOを映像化しています。 アニメを入り口にして『ソードアート・オンライン』という小説に興味を持ってもらえたり、MMORPGというものに興味を持ってもらえたら嬉しいですね。ただプレイ時間には注意して、リアルも大事にしてください(笑)